白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル

2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生

写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ


2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.


2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル

2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル

2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.


写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
白神で出あった両生類 ~ カエルたち
大川渓流の淀みを平泳ぎで渡るアズマヒキガエル

2011年7月23日 アズマヒキガエル 大川渓流にて.
白神山地核心部の青鹿岳のあたりに端を発する大川の渓流.その源流部の手前4~5kmあたりに大川渓流の最大の難所“タカヘグリ”があります(Homeのページ参照).写真は渓流の両岸に切り立つ黒壁のタカヘグリを目指して渓流遡行しているときに出会ったアズマヒキガエルです.大きな岩のかげで波のない透きとおるような水面を気持ちよさそうに平泳ぎで泳いでいる姿は何とも微笑ましい限りでした.渓流を泳いでいたので、ナガレヒキガエル発見!かと胸が高鳴りましたが,立派な鼓膜がついていて高地型のアズマヒキガエルでした.産卵期でもないのに,ここ大川渓流では頻繁にアズマヒキガエルを見かけました.
アズマヒキガエル2景

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルの成体 大川渓流沿いにて.
写真右: 2011年7月23日 アズマヒキガエルの成体 大川上流タカヘグリ近辺にて.
上の3枚の写真からわかるように,アズマヒキガエルには個体によって褐色、黄褐色、赤褐色などさまざまな体色変異があります.白神のものは高地性でヤマヒキガエルとも呼ばれているようです.
アズマヒキガエルの産卵とオタマジャクシ

写真左: 2011年5月19日 アズマヒキガエルとその卵塊 大川渓流沿いにて.
ヒキガエルの卵塊は2-5mほどの紐状ジェリーで,その中に径2-3mmの黒い卵が何千個か入っていると 言います.
写真右: 2011年6月5日 写真左の卵塊から孵化して間もないオタマジャクシ 大川渓流沿いにて.
この写真のカエルと卵塊の動画を撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】を ご覧ください.
ヤマアカガエル

2010年4月15日 抱接中のヤマアカガエルとその卵塊広泰寺池にて.
写真中央のあたりと右下隅に抱接中のカップルがいます.背中に乗って抱きついている小さい方がオスで,下の大きい方がメスです.中央のカップルのメスはお腹がほとんどぺちゃんこですので,産卵はほぼ終えたようです.右下隅のカップルは産卵中のようで,産卵直後のまだ水をあまり吸収していない黒っぽい卵塊が見えます.時間とともに水を吸収しジェリー層が透明になってきます.
ヤマアカガエルの卵発生

写真左: 2009年4月29日 原腸胚~神経胚あたりまで発生が進んでいるヤマアカガエルの卵塊 広泰寺
池にて.
写真右: 2011年5月18日 尾芽胚期のヤマアカガエル 広泰寺池にて.
このステージになると卵膜の中で体をくねらせたり尾をふって動いたりするのがわかります.参考までに部分拡大の写真を下にあげておきます.

卵膜を破って自由生活へ ~ オタマジャクシ


2010年5月18日 孵化したヤマアカガエルのオタマ
ジャクシ 広泰寺池にて.
20011年6月15日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ
広泰寺池にて.
ヤマアカガエルの発生段階4景
左上より順に時計回りで(何れも広泰寺池にて)
2011年7月2日 ヤマアカガエルのオタマジャクシ.
2009年8月1日 オタマジャクシの時期を終えつつあるヤマアカガエルの仔蛙.
2009年4月29日 そろそろ陸上生活へ移行するヤマアカガエル.
2010年6月13日 陸上生活のヤマアカガエルの成体.


2011年7月23日 ヤマアカガエルの成体 大川渓流・タカヘグリにて.
ヤマアカガエルは背面両側にすじ状の隆起線(背側線)があり,鼓膜の手前あたりで外側にカーブするのが特徴です(ニホンアカガエルはカーブすることなく真っ直ぐ伸びます).写真ではカーブしていないように見えますが,カメラアングルを変えて同じ個体を撮ったもう一枚の写真(写真下;色調が変わってしまいましたが)でははっきりカーブしているのが見えるので,ヤマアカガエルでよいでしょう.

2011年7月23日 ヤマアカガエル 大川渓流・タカヘグリにて.
上の写真と同じ個体.背側線が鼓膜の手前あたりで外側に向かってカーブしているのがよく見えます.
二ホンアマガエル

2009年8月19日 二ホンアマガエルの仔蛙 秋田県八峰町にて.
鼻孔から目-鼓膜-前肢つけねあたりまでつらなる黒いラインが本種同定の指標の1つです.
モリアオガエル

写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
モリアオガエル

写真左: 2009年6月20日 モリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
写真右: 2011年6月16日 モリアオガエルの仔蛙 広泰寺池にて.
二ホンアマガエルに見られるような黒いラインは見当たりません.

2009年6月12日 抱接中のモリアオガエル 広泰寺池にて.
モリアオガエルは日本では唯一の樹上産卵ガエルで,指先に吸盤がついており自在に木に登ります.白神山地では雪が消えて間もない5月下旬になるとモリアオガエルたちが池や沼の周りに集まってきます.観察園近くの広泰寺池にもやってきて次々と木に登り,水面に張り出した枝先に白い泡の卵塊を産みつけます.産卵を控えた大きなお腹のメスの背中に小さなオスが抱きつきよじ登って行く光景は,この時季里山を散策する人たちにはお馴染みの光景でしょう.指先の吸盤がよく発達しているのがわかりますね.

2010年5月21日 樹上で抱接中のモリアオガエル(写真左)と水中で抱接中のモリアオガエル(写真右)
広泰寺参道脇の小沼にて.
5月下旬,小雨の日などはモリアオガエルたちの産卵活動が活発になります.

2009年6月7日 産卵たけなわのモリアオガエル 広泰寺池にて.
卵塊を産みつける樹種は決まっていないようで,ヤマモミジやスギ,コシアブラ,ヤマグワなど水面に覆いかぶさるような枝を選んでいるようです.産卵がはじまると1匹のメスにたくさんのオスがぶら下がって産卵された卵に精子をかけ両足でしきりにかき回して泡立て,白い泡巣の卵塊にします.左側の枝にもう一組の抱接カップルと産卵に合流しようとする雄ガエル2匹,右下にもう一組の産卵中のカエルもみえます.

2010年6月8日 ホオノキの枝先に産卵するモリアオガエル 広泰寺参道脇の小沼にて.
真ん中に見える大きな個体がメスで,今まさに産卵中で10匹前後のオスが群がって泡状の卵塊づくりに励んでいます.直径10~15cmほどの卵塊の中には黄白色の卵が数百個入っていて,泡状の卵塊の中で受精した卵はすぐ発生を始めます.この産卵シーンを動画に撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.

2010年6月8日 モリアオガエルの産卵(赤外映像より) 広泰寺池にて.
この日夕刻6時ころ,広泰寺池のほとりのヤマモミジの枝先でモリアオガエルが産卵している場面に遭遇,タイミングよく持参していたハンディカムを三脚に固定し動画で撮影できました.この写真は1時間ほどして夕闇が迫り夜間撮影に切り替え撮影した動画からの1シーンです.赤外線による撮影のため,目が特異的に反射し独特の雰囲気を醸し出しています.日中と夜間の産卵シーンを連続で撮ってありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.
広泰寺池

2010年5月21日 広泰寺と広泰寺池の自然環境.
このホームページでは広泰寺池の動物がしばしば登場しますので, 参考までにその池の写真を上げておきます. 奥に見えるのが広泰寺で, 池の水面に広泰寺が映えているのが見えます. 広泰寺は弘前大学白神自然観察園の北側に接する位置にあり, 広泰寺池の手前側が観察園になります.

2009年6月7日 モリアオガエルの産卵シーン2景 広泰寺池にて.
白い泡の卵塊を作る時,卵塊が落ちてしまわないよう近くの葉をとりこんで泡立てます.2~3日もすると卵塊表面が乾き,これによって卵塊がしっかり枝に固定されるのです.

2009年6月7日 産卵を終えて・・・ 広泰寺池にて.
ヤマグワの枝先に産みつけられた卵塊.産卵を終えると親蛙たちは卵塊に別れを告げます.しばらく池にとどまるものもいますが,ほとんどは森の中へと散らばってゆくようです.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊.広泰寺池にて.

2009年5月24日 ヤマモミジの小枝に産みつけられたモリアオガエルの卵塊 広泰寺池にて.
やがて2~3週間もすれば小さなオタマジャクシ(幼生)たちが泡巣を溶かし下の池にぽたぽた落ちて泳ぎ出します.ところが多くの場合,池では彼らをひとのみしてしまうアカハライモリが待ち構えていているのです.この天敵から逃れることが出来たとしても,ヤゴやゲンゴロウなどの水棲昆虫たちがさらなる天敵として襲ってくるのです.“フィールドサイン”のニホンザルのところで紹介しましたが,モリアオガエルは樹上での卵塊の時はもちろん水中にいても地上に上がってからもまさに天敵だらけなのです.
カジカガエル ~ 渓流性のカエル

2010年6月6日 水底で抱接中のカジカガエル 大川渓流の川原にて.
風薫る初夏,大川の川原を歩くと,うるさいほどのエゾハルゼミの鳴き声に交じってあちらこちらでカジカガエルの鈴の音のような鳴き声がきこえ,水たまりをのぞくとカジカガエルの卵塊や背中に雄をおんぶした抱接中のカップルが見つかります.抱接中のカップルは保護色のようにまわりの砂礫に溶け込んだような色合いになっているので,見逃しやすいのですが,注意深く目を凝らすと見えてきます.写真のカップルのこの後の動態を撮った動画もありますので,興味のある方は【白神散策Movieでご案内】をご覧ください.


白神山地・大川源流 部のタカヘグリ探訪
写真上のカップルの近くでたまたま水面から半分頭を出している小岩を動かしてみたら、神経胚から尾芽胚あたりまで発生が進んでいるカジカガエルの卵塊が見えました(写真左)。ラッキー!! わかりやすいように中央部分を拡大してみると(写真右),真ん中あたりに神経管ができつつある神経胚,右下あたりに尾が形成されてくるいわゆる尾芽胚がよくみえます.この後,半分めくれ上がった卵塊をもとの配置にもどし,取り外した小岩を元どおりにかぶせておきました.みんな元気に孵化してね!
フィールドサイン – その③(雪上の足跡痕)
アカネズミ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左右とも2012年1月18日 アカネズミの足跡 白神自然観察園にて.
白神自然環境研究所近くのとある灌木の根元から研究所の方へまっすぐに点々と下る小さな動物の足跡を見つけました(写真左).よく見るとペアになった足跡が10cm前後の間隔で続きその間を連結するようにみえるたて筋がついています(写真右).これはアカネズミが長い尾を引きずった跡なのです.アカネズミは8~14cmの頭胴長に対して尾長が7~13cmもあるので,尾の跡がついてしまうのです.

写真左右とも: 2012年1月18日 アカネズミの足跡 白神自然観察園にて.
ヒメネズミ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左右とも: 2012年2月22日 ヒメネズミの足跡 白神自然観察園にて.
ヒメネズミの頭胴長は6.5~10cmで,尾率(頭胴長に対する尾長の割合)は100%以上の非常に長い尾を持っています.ちなみにアカネズミは100%には達しません.この写真では尾を引きずった跡があり,アカネズミのfootprintsに似ていますが,歩幅が短く6~7cmくらいなので,ヒメネズミのものと思われます.
タヌキ


写真左 2009年12月13日 タヌキの足跡 白神自然観察園にて.
写真中 2010年3月19日 タヌキの足跡 久渡寺山山麓の久渡寺境内にて.
写真右 2010年3月2日 タヌキの足跡 広泰寺前の広場にて.
タヌキはキツネと同様に,前足・後足とも爪先立ちで歩く指行性歩行で,第2指~第5指の肉球(指球)と指のつけ根の肉球(掌球)計5つの肉球が寄りそい,丸い梅の花に似た形の足跡になります.タヌキの歩行跡は一直線にまっすぐ続くキツネの足跡と違って,ゆるくカーブするS字状になることが多いようです.
キツネ


2010年1月19日 キツネの足跡 秋田県藤里町にて.
写真左はキツネが歩いていてちょっと立ち止まったような足跡.写真右は2匹分のキツネの足跡のようです.指球や掌球,爪跡も見えます.

2010年3月26日 キツネの足跡 広泰寺前の広場にて.
キツネの足跡は並足の場合,前足のあとに後足が重なるのでほぼ一直線になるといいます.広場から奥のスギ林に向かって通り過ぎた後,ほんの少し雪が降ったようで,肉球や爪跡が見えませんが,一直線の歩行跡からキツネの足跡のように思われます.
ニホンリス
.jpg)
.jpg)
2010年3月28日 二ホンリスの足跡 広泰寺杉並木参道にて.
広泰寺参道の杉並木には二ホンリスがたくさん生息しているようで,雪のある時季にこの参道を通ると,降雪や吹雪でない限り写真のようなリスの足跡をたくさん見ることが出来ます.写真右は跳躍歩行中の1回の着地分の前後肢の足跡.

写真左右とも: 2010年3月2日 二ホンリスの足跡 白神自然観察園にて.
二ホンリスは飛び跳ねながら進む跳躍歩行をし ます.早く進むときに飛び跳ねた後,左右の前足をそろえて着地し,その直後に前足跡の先に後足が着地するため,前足をかなめとする扇型の足跡が出来ます.
モモンガ

写真左 2011年1月27日 モモンガの足跡 白神自然観察園にて.
写真右 2012年2月22日 モモンガの足跡 白神自然観察園にて.
モモンガが雪面を歩いているところなんて見たことがないので,想像もつきませんでしたが,インターネットで紹介されていたモモンガの足跡が左の写真と瓜二つでしたので,モモンガの足跡ということにしておきます.
ノウサギ
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
写真左 2010年3月17日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて.
写真右 2010年3月28日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて.
ノウサギの足跡は白神山地に限らず,積雪期の山に行くとよく目にするフィールドサインです.二ホンリスと同様,さきに着地した前足の先に後足が着地する跳躍歩行型で,進行方向に縦に並んだ2つの足跡が前足跡,その先に横に並んだ2つの足跡が後足跡です.したがって,写真ではどちらも手前から奥の方に向かっている足跡ということになります.
.jpg)
2010年3月26日 ノウサギの足跡 白神自然観察園にて.
この写真も手前から林の奥の方に向かっているノウサギの足跡です.スキー場でスキーリフトに乗っていてよく目にするお馴染みの光景.
弘前大学白神自然観察園
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
_JPG.jpg)
2011年2月24日(写真上)・10月12日(写真下) 白神自然観察園中心部の尾根の上に建つ“不識の塔”からみた冬と秋の白神.
写真中央あたりに広泰寺への杉並木参道があり,その左手に焦げ茶色の屋根が見えているのが弘前大学白神自然環境研究所(2009年開設;現 農学生命科学部付属白神自然環境研究センター)です.筆者は弘前大学を退職した2009年から2012年にかけ,この研究所をベースに観察園内および園外の白神山地をあちこち歩きまわり,このホームページで紹介している動物たちにめぐり逢うことができました.
イイズナ
ニホンイイズナの雪くぐり-その1
.jpg)

2010年12月19日 二ホンイイズナの雪くぐり痕 大沢林道にて.
この日,白神自然観察園に隣接する大沢林道でニホンイイズナの雪くぐりの跡を見つけました.イイズナは冬になると雪に潜って雪の下で活動しているネズミなどをとらえ,雪の表面に穴をあけて出てくる習性があります.写真は左端の林の方から歩いてきたイイズナが斜面のところで雪の中にもぐりこみ上に上がってきて雪の表面に抜け出て,右方向に跳躍して移動した跡です.
参考までに,岩木山麓高照神社の杉林で捕獲した換毛中のニホンイイズナの剥製写真(右下)をあげ
ておきます.
ニホンイイズナの雪くぐり-その2

写真左 2010年2月20日 イイズナの雪くぐり 大川林道入り口付近にて.
県道“白神ライン”の車道脇の除雪堆積に積もった雪の上のところをイイズナが横切ったようで,雪に潜ったり顔を出したり,雪の上に出て歩いたりしているのがよくわかります.
写真右 2011年2月6日 イイズナの足跡? 白神自然観察園にて.
イイズナの体重はメスでほんの50g,オスで80~100gくらいしかありません.写真左の時とくらべ雪質が違うようですが,写真のように小さな足跡で尻尾を引きずった跡もないので,イイズナの足跡ぐらいしか思い浮かびません.観察園には体重が10g前後のジネズミやトガリネズミも生息しています.厳冬期に雪の上に出て来ることはめったにないのですが,この日は陽気に誘われ,雪面にでてきて足跡を残したという可能性もありそうです.
オコジョかな?イタチかな?

写真左 2012年1月18日 オコジョの足跡か? 白神自然観察園にて.
写真右 2011年2月20日 オコジョの足跡か? 大川林道入口付近にて.
左右両足がペアになって並んだ小さな足跡が繰り返し続いています.このようなパターンは足跡サイズを考慮すると,オコジョかイタチの足跡のようですが,歩行跡が浅いので,オコジョの可能性が高いでしょう.
ニホンテン

写真左 2010年3月28日 二ホンテンの足跡 白神自然観察園にて.
写真右 2011年1月27日 二ホンテンの足跡 白神自然観察園にて.
二ホンテンはイタチの仲間であり,歩行の基本パターンはオコジョや二ホンイタチと同じです.テンは体重が1.5kg前後もあり,100g前後のオコジョとくらべると格段に重く,その重さの違いは足跡にもはっきり表れ,深く沈んだ足跡になります.
ニホンカモシカ

写真左 2010年2月28日 ニホンカモシカの足跡 大沢川林道 にて.
写真右 2010年3月13日 ニホンカモシカの足跡 白神自然観察園にて.
ニホンカモシカはウシ科の仲間(偶蹄類)で,半月状の2つの蹄が向き合った形をとり,二ホンジカが生息していない地域であれば,見間違うことはありません.もう一つの特徴としては,蹄の後方に副蹄と呼ばれる突起の跡がみえるということです.写真右左ともこの福蹄の跡がはっきり見えているので,ニホンカモシカの足跡ですね.
ニホンザル
『白神どうぶつ讃歌 白神の森で
出あった動物たち』へ転載
2010年4月7日 ニホンザルの足跡 白神自然観察園にて.
この写真で足跡の真ん中辺りから横に突き出ているのは後足の親指で,前足の跡は小さく親指跡はほとんど付きません.
.jpg)
2010年2月21日 ニホンザルの足跡 芦沢(砂子瀬)にて.
真ん中辺りの4個の足跡のうち,上2つが前足跡,下2つが後足跡です.
.jpg)
2010年2月21日 ニホンザルの足跡 芦沢(砂子瀬)にて.
白神山地ではニホンザルの足跡はしばしば見かけます.霊長類だけあってヒトのものとよく似ていますが,後ろ足に関していえば人の手のように親指だけが他の指とは異なり横向きに開いて歩きます.前足(手)の親指の跡はあまり目立ちません.
キジorヤマドリの飛来着地と歩行のフィールドサイン


2011年1月17日 キジかヤマドリの着地痕 白神自然観察園にて.
広泰寺のスギ並木参道の近くで,キジでしょうかヤマドリでしょうか,右手前の方から飛来し雪面に着地し,そのまま木の間をぬって向こうへ歩いて行った跡を見つけました.着地した際,体が雪に沈んだ様子や左右に飛散した雪の跡がよくわかりますね(写真左).このすぐ近くに同様の着地痕がさらに2つありました(写真中央と右).3羽の鳥が一緒に飛来したようです.真ん中の写真では着地の際の雪の沈みが浅いので,幼鳥なのかもしれませんね.

2011年1月17日 上掲の飛来着地の鳥3羽が参道脇の水路に沿って移動した歩行跡.
キジないしはヤマドリのラッセル痕か?

2011年1月27日 キジかヤマドリのラッセル痕 白神自然観察園にて.
雪深い厳冬期の観察園の急峻な沢で,斜面を横切る不思議な跡を見つけました.足跡がほとんど見えませんので,4足歩行の哺乳類ではないようです.写真のコントラストをあげて分析すると中型の鳥の羽跡を確認することができました.西目屋村のマタギ舎の工藤光治さんとオコジョの研究で知られる新潟県青海町の野柴木洋さんに写真を見てもらったところ,“ヤマドリかキジが柔らかい雪の斜面を移動したラッセル痕でしょう”ということでした.
